十和田湖に生息している生物の概要
青森県と秋田県の県境にまたがる十和田湖は、豊かな自然と四季折々の風景が魅力の火山湖。その静かな湖面の下には、実はたくさんの魚たちが暮らしています。かつては魚がいなかったこの湖に、明治時代からの放流事業により命が芽吹き、今では十和田湖ならではの水中世界が広がっています。
魚類の多様性
現在、十和田湖で確実に生息が確認されている魚類は、6科10属12種(亜種含む)であり、その多くは放流や人為的導入によって持ち込まれた「外来魚」となっています。
主な定着種と特徴
魚種名 | 特徴や生態の概要 |
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ヒメマス | 北海道支笏湖から導入されたベニザケの陸封型。十和田湖ではふ化場による放流事業で増殖。秋に産卵回遊する姿が見られる。 |
サクラマス | 降海型のサケ科魚。湖内では大型個体が釣り上げられることもあり、レクリエーション釣魚としても人気。 |
イワナ | 山間部の清流に生息する魚で、古くから放流が行われた。個体数は多くない。 |
ワカサギ | 十和田湖では1980年代以降に急増。ヒメマスと餌をめぐって競合関係にある。 |
コイ | 1884年に最初の放流が行われた。食用としても人気で、夏には釣り人の姿が見られる。 |
ギンブナ | 1892年に放流開始。現在でも湖岸付近でふくべ網などで漁獲されている。 |
ドジョウ | 1971年に確認。水族館展示魚が逃げ出した可能性が指摘されている。 |
イトヨ | 湖内では比較的多く確認される。遺伝的には太平洋型の淡水型個体群。 |
イバラトミヨ | トゲウオ科の淡水魚で、湖岸ヨシ帯などに営巣する習性を持つ。 |
ヌマチチブ | 底生性のハゼ類で、ふくべ網でもしばしば捕獲される。 |
ウキゴリ | 北日本に広く分布。大型個体も湖岸で見られる。 |
ジュズカケハゼ | 少数ながら湖岸で採捕されているハゼ科魚類。 |
十和田湖に在来魚はいたのか?
実は、もともと十和田湖には魚が棲んでいませんでした。その理由は、湖と川を隔てる「銚子大滝(ちょうしおおたき)」の存在。魚が遡上できなかったため、長い間“魚のいない湖”だったのです。
明治時代になってから、ヒメマスやサクラマスなどが人の手で放流され、少しずつ命が育まれていきました。今では、漁業・観光・研究の対象として、十和田湖の魚たちは重要な存在になっています。
十和田湖は“生きた博物館”――未来へつなぐ水の命
かつて魚がいなかった十和田湖は、明治以降の放流によって命を育み、今では多様な魚たちが暮らす「生きた博物館」のような存在となりました。
その歴史の中では、ニジマス、ビワマス、サケ、カワマス、ブラウントラウト、イトウといった魚も導入されましたが、残念ながらほとんどは定着せず、現在では確認されていません。
さらに近年では、オオクチバスやブルーギルなどの外来種の侵入も懸念されており、生態系への影響が注目されています。
地域の宝「ヒメマス」と生物多様性の守り手たち
十和田湖の代表的な魚であるヒメマスは、漁業や観光にとって欠かせない大切な存在です。地元漁協によって稚魚のふ化・放流が行われ、資源の維持が支えられています。
この湖を未来へ引き継ぐためには、外来魚の適切な管理と、湖で育まれた資源の保全が両立されることが求められています。
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