十和田湖から流れる唯一の河川が奥入瀬川です。日本を代表する景勝地で、奥に入るほど「瀬」が多くなることから「奥入瀬」と名づけれたとされています。
奥入瀬川は、約75kmの長さを持ち、八戸市の近くで太平洋に流れ込み、この川の十和田湖子ノ口から焼山の十和田橋までの約14kmを「奥入瀬渓流」と呼びます。特別名勝および天然記念物に指定されている文化財で、自然公園法特別保護地区として特に保全されています。渓流沿いに多数の滝が点在していることから「瀑布街道」とも呼ばれます。
奥入瀬渓流の魅力は、水の流れが刻々と変わり、渓流沿いに点在する滝を間近に眺められるだけでなく、水面とほぼ同じ高さで散策できる点にあります。
子ノ口から焼山まで続く繊細な渓流は、苔むした岩を洗い流し、激しい瀬や静かな淵、躍動感あふれる滝へと姿を変え、訪れるたびに異なる表情を見せてくれます。
森と水が織りなす豊かな自然環境の中、山野草やブナ、トチノキの林など手つかずの自然が広がり、四季折々の美しい景色を五感で味わいながら、ゆっくりと渓流沿いを散策することが、奥入瀬渓流を楽しむ最良の方法です。
何度訪れても飽きることのない魅力が、多くの人々を惹きつけています。
新緑の奥入瀬渓流は、瑞々しい緑に包まれ、生命力あふれる景色が広がります。
若葉が水面に映え、苔むした岩や木々も鮮やかな緑色に染まり、清らかな水の流れと調和して一層美しさを増します。新緑の見頃は例年5月中旬から6月上旬頃で、春から初夏にかけてのこの時期は、渓流沿いの散策が特におすすめです。
爽やかな空気とともに自然の息吹を全身で感じられ、新緑に彩られた奥入瀬渓流は、訪れる人に心地よい癒しと活力を与えてくれる特別な時間を提供します。
「残したい日本の音風景100選」の1つで、滝、渓流、岩やコケとの紅葉のコラボレーションは絶景で紅葉・黄葉の名所としても知られています。
奥入瀬渓流の紅葉は十和田湖に近い上流付近では10月の中旬から紅葉が始まり、下流の焼山付近では11月の上旬頃まで楽しむ事ができます。
渓流沿いにはたくさんのカエデ類が生育していて、その多くが色鮮やかに紅葉するヤマモミジ、オニイタヤ、ハウチワカエデなどが見られます。
冬の奥入瀬渓流は、冷たい空気と雪景色に包まれ、特に氷瀑と呼ばれる凍った滝の美しさが見どころです。水が流れ落ちる滝が氷結し、まるで氷の彫刻のように輝く姿は、まさに自然の神秘を感じさせます。
特に「双白髪の滝」や「銚子大滝」などでは、冬の厳しい寒さが織りなす氷の造形が見られ、訪れる人々の目を楽しませています。凍りついた滝の周りには真っ白な雪が積もり、静けさと透明感あふれる幻想的な世界が広がります。
氷瀑の見ごろは例年1月から2月頃で、晴れた日の青空を背景に輝く氷の結晶は、写真愛好家にも人気のスポットです。冬の厳しい自然環境の中で生まれるこの美しい景観は、奥入瀬渓流ならではの特別な体験と言えるでしょう。
この奥入瀬渓流沿いに道が拓かれたのは1903年(明治36年)のことで、幅わずか1.2mの林道でしたが、ここから奥入瀬や十和田湖観光の歴史が始まり、1920年(大正9年)には子ノ口までの自動車道が開通し、バスが運行されました。
2025年現在、奥入瀬渓流北西側に青橅山バイパス完成に向けて工事着工しています。青橅山バイパスによって奥入瀬渓流沿いの通過 交通を排除することが可能になり、奥入瀬渓流沿いの 自然環境が保全されるとともに、国立公園本来の静穏な環境の実現が期待されます。
銚子大滝(ちょうしおおたき)は、奥入瀬渓流を代表する絶景スポットのひとつで、「奥入瀬のハイライト」とも称される人気の名所です。幅約20メートル、高さ約7メートルを誇る滝は、水量が豊富で、その豪快な流れは見る者に圧倒的な迫力を与えます。
名前の由来は、日本酒を注ぐ器「銚子」に形が似ていることからといわれています。渓流沿いの遊歩道からアクセスしやすく、滝の間近まで近づけるため、勢いよく流れ落ちる水しぶきを肌で感じることができます。
新緑の季節には鮮やかな若葉に包まれ、秋には美しい紅葉との見事なコントラストが楽しめるなど、四季折々に異なる表情を見せるのも大きな魅力です。自然の力強さと美しさを間近で感じられる、奥入瀬渓流屈指の癒しスポットです。
雲井の滝(くもいのたき)は、奥入瀬渓流の中でもひときわ荘厳な雰囲気を漂わせる名瀑です。高さ約20メートルの三段にわたる滝は、岩肌を伝って優雅に流れ落ち、その姿はまるで空から降り注ぐ雲のしずくのようだといわれています。
滝の名もその優美な印象から「雲井」と名づけられたとされており、静寂の中に響く水音が幻想的な空間を作り出しています。
周囲には原生林が広がり、新緑や紅葉の季節には特に美しい景観が楽しめます。滝壺付近まで遊歩道が整備されているため、間近でその繊細かつ力強い水の流れを感じることができます。
奥入瀬渓流の自然美を象徴するスポットのひとつとして、多くの訪問者を魅了しています。
奥入瀬渓流の最上流部、子ノ口側から下ると最初に現れる滝が「五両の滝」です。この辺りは「万両の流れ」「千両岩」「百両橋」とともに「壱万壱千百五両の眺め」と呼ばれ、風光明媚な景観が広がっています。渓流の中でも特に初めて訪れる方に印象深いスポットです。
大きな岩を境に二筋の滝が流れ落ちる様子から名付けられた「姉妹の滝」は、その名にふさわしい清らかな美しさを持っています。静かな渓流の中で、二つの滝が並んで流れる様子は、まるで姉妹が寄り添っているかのようです。
阿修羅の流れ(あしゅらのながれ)は、奥入瀬渓流の中でも特に人気の高い絶景スポットのひとつです。岩の間を縫うように勢いよく流れる水が、まるで荒ぶる神「阿修羅」のごとく激しく力強いことから、その名が付けられました。
渓流の流れは力強さと美しさを併せ持ち、苔むした岩や木々の緑と相まって、まるで絵画のような風景を生み出します。四季折々で異なる表情を見せ、新緑の爽やかさや紅葉の鮮やかさが水の流れと見事に調和し、訪れる人の心を惹きつけます。
遊歩道からも間近に眺めることができるため、奥入瀬渓流の自然のダイナミズムを肌で感じられる絶好のポイントです。写真愛好家にも人気が高く、訪れた際にはぜひ立ち寄りたいスポットです。
十和田湖から流れ出る最初の急流である「万両の流れ」は、その荒々しい流れと雄大な景観から「壱万壱千百五両の眺め」として知られています。この辺りの渓流は、訪れる人々に自然の力強さを感じさせてくれます。
豊かな水量にもかかわらず、流れはそれほどきつくなく、おだやかな流れの中に、ほどよく配置された岩の上にはさまざまな植物が生えています。四季を通して美しい景勝ポイントであり、特に5月中旬にはツツジ類が岩の上に鮮やかに咲き、訪れる人々を楽しませてくれます。
かつては玉石を敷きつめたような河床に澄んだ水が流れる美しい場所だった「紫明渓」は、現在では土砂がたまり、昔の姿は失われています。しかし、広がりのある河原は季節と場所を選べば今も捨てがたい撮影ポイントであり、特に冬の景色が素晴らしいと評判です。
馬門岩は、奥入瀬渓流の中でも特に印象的な大きな岩の一つです。名前の由来は、昔、この岩が馬の門のように見えたことからと言われています。実際には大きな一枚岩で、渓流の流れの中にどっしりと構えている姿が特徴です。
石ヶ戸(いしげど)休憩所は、奥入瀬渓流沿いにある唯一の休憩施設で、散策の出発点や中継地点として多くの観光客に利用されています。「石ヶ戸」とは、この地域の方言で“石でできた小屋”を意味し、近くには大きな一枚岩が木の枝に支えられているように見える特徴的な景観が広がり、地名の由来にもなっています。
施設内には軽食コーナーや売店、トイレ、休憩スペースが整備されており、ラーメンやそばなどの軽食のほか、地元ならではの名物「砂利ソフト」なども味わうことができます。また、レンタサイクルや観光案内所も併設されており、奥入瀬渓流の自然をより深く楽しむための拠点として最適です。
新緑や紅葉シーズンには特に多くの人が訪れ、奥入瀬の大自然を体感しながらひと息つけるスポットとして親しまれています。
奥入瀬渓流館は、青森県十和田市にある奥入瀬渓流の自然や魅力をわかりやすく紹介する情報発信施設です。渓流散策の拠点として、多くの観光客に利用されています。館内には、奥入瀬の地形や生態系、四季折々の自然の姿を紹介するパネルや映像展示があり、自然への理解を深めることができます。ネイチャーガイドが常駐しており、散策ルートや見どころのアドバイスも受けられます。
また、青森産りんごを使ったスイーツやドリンクが楽しめるカフェ「あら、りんご。」や、苔やキノコなど自然をテーマにしたクラフト雑貨を扱うショップも併設されています。入館は無料で、四季を通じて自然の魅力にふれられるスポットとして親しまれています。渓流を訪れる前後に立ち寄ることで、より充実した自然体験ができる場所です。
春の初め頃、5月にはキクザキイチゲやニリンソウが一斉に花を咲かせ、林床を覆います。奥入瀬渓流は谷の底が平らな場所が多く、湿った場所を好む植物が多く育っています。
トチノキ、カツラ、サワグルミの林が両岸に広がり、小高い場所にはカエデやブナの大木も見られます。地面はオシダやリョウメンシダ、ジュウモンジシダなどのシダ類が多く覆っています。
下流の洪水で水に浸かる場所にはヤナギ類やタニガワハンノキが育ち、土地が安定するとシロヤナギやドロヤナギ、サワグルミ、トチノキが生えてきます。
また、渓流沿いには多くのカエデ類が育ち、その多くは秋に色鮮やかに紅葉して訪れる人を楽しませています。特にヤマモミジ、オニイタヤ、ハウチワカエデが多く見られます。