青森県のナガイモ(長いも)は、全国トップクラスの品質と出荷量を誇る特産野菜で、特に県南部の十和田市、三沢市、六戸町などが主要な産地となっています。中でも十和田市は県内屈指の産地として知られ、滑らかな食感と強い粘り、アクの少なさなどが評価されています。
令和3年(2021年)時点の農林水産省の統計によれば、青森県のナガイモ出荷量は全国第2位で、国内流通量の約36%を占めています。第1位は北海道で、約52%のシェアを誇り、この2道県で全国のナガイモの約9割を生産していることになります。
「ナガイモ」という名称はその形状に由来していますが、農業統計上では「ヤマノイモ」という総称が用いられています。ナガイモは非常に折れやすく繊細な作物であるため、収穫は深い土中から丁寧に掘り起こす必要があり、その作業は秋(秋掘り)と翌年春(春掘り)の2回に分けて行われます。
栽培には冷涼な気候と水はけの良い火山灰土壌が適しており、病害虫の発生が少ないことから、農薬の使用を抑えた安全・安心な栽培が可能です。このような環境で育てられたナガイモは、国内外で高く評価されており、アメリカや台湾などへの輸出も進んでいます。
中でも、十和田の長いもは特に品質に優れ、色白で粘りが強く、アクが少ないのが特徴です。すりおろしてとろろとして味わうほか、刻んでシャキシャキした食感を楽しむなど、生で食べる料理に最適です。
また、地元では郷土料理「長芋すいとん」や漬物などにも活用されており、家庭の食卓でも多彩な料理に使われています。
加熱しても風味や食感が損なわれにくいため、炒め物や天ぷら、お好み焼きなど幅広い調理法に対応し、料理の幅を広げてくれる万能な食材です。
さらにナガイモは栄養価も非常に高く、古くから「山のウナギ」とも呼ばれるほど滋養強壮に優れた食材とされています。
ぬめりの正体である「ムチン」は、胃の粘膜を保護し、たんぱく質の吸収を助ける働きがあることから、健康食としての評価も高まっています。
このように、青森県のナガイモ、とりわけ十和田の長いもは、品質、安全性、栄養価、調理の多様性のすべてにおいて優れており、日本を代表する農産物として今後も大いに注目される存在です。