猫の多頭飼育崩壊、殺処分とは
猫の多頭飼育崩壊をご存知ですか?
猫のしぐさ、全体的に丸いフォルム、手足の肉球、小さな口とおでこの大きさの比率は人間の赤ちゃんと似ており、私たちの母性本能をくすぐり思わず可愛いと思う方も多く、ペットとして飼われる方も多いのではないでしょうか。ですが、飼い方を間違えると、猫の繁殖力の高さから、増えすぎて飼えなくなったがゆえ、悲惨な現状を見る可能性があります。それが多頭飼育崩壊と殺処分です。
時折、全国的ニュースにもなる地域の問題となっている猫の多頭飼育崩壊。
この問題を起こさないためと殺処分をゼロのまちへ取り組む皆さんへインタビューを行いました。
聞き手 : 米内山和正
3人の関係性
木村秀政さんの妻は、木村侑香さん。侑香さんが所属する「動物愛護支援の会八戸」の学生部(のらねこ部有志)との繋がりが北里大学2年生の木村開人さんとの出会いのきっかけになりました。3人は、猫の殺処分について何かできればと思っていました。
木村秀政さんは、公益社団法人十和田青年会議所に所属しており、2022年に委員長になる事が決まっていたので、どのような事業を行おうか考えていました。
そこで3人の共通の想い、命の大切さと猫の飼い方、殺処分ゼロのまちへの取り組みを実現化する行動へ繋がります。
青少年育成事業 君と十和田とネコの事 – 猫の殺処分ゼロのまちへ
2022年8月31日、公益社団法人十和田青年会議所は、青少年育成事業として「君と十和田とネコの事 – 猫の殺処分ゼロのまちへ」を開催。青森県立三本木農業恵拓高校普通科観光コースの生徒を対象に、猫の殺処分の背景を知ってもらい、共に殺処分をなくすためのメッセージを考える活動を行いました。
猫って、すごい大変なんですよ。人もいなければボランティアの数も少ないし、結構、問い合わせも来るんです。
「動物愛護支援の会八戸」で活動する妻の侑香さんや「北里しっぽの会」であったり、猫に対して困ってる人は多くいるんだなぁと思って、より多くの人に知ってもらえたらっていう感じの流れですかね。と木村秀政さんとの会話から始まりました。
ネコの殺処分をゼロにしたいと思ったきっかけを教えてください。
元々は仙台に住んでいた頃、妻の侑香さんのアパートに猫がいまして、猫好きになるきっかけがありました。その後、十和田市に戻り、2015年9月に永楽食堂を開店しました。この場所である屋台村「三本木1955」周辺に猫がめっちゃたくさんいたんですよ。
当時の模様 2015年8月ごろ
その猫たちに餌を与えてまして、悪い事ではないと思っていました。
餌を与え続ける事で、猫がどんどん増えることを知らなかったんですよね。
その後、我が家でその猫を保護したんですよ。妊娠していたので出産もしました。子猫の里親探しもしました。避妊手術をしないと繁殖力がすごくて無限に増える事を知りました。
妻の侑香さんが「動物愛護支援の会八戸」でボランティア活動を始め、お互いに猫についての知識を知る事になります。
今現在、家には飼い猫が7匹いて全頭保護猫です。その他に預かり保護猫は4匹います。
ボランティア団体には
「猫が子猫を産んだ。連れてってくれ」「近所に野良猫がたくさんいる、どうにかして」といった問い合わせがたくさんあります。猫の繁殖力の強さを知らないで、無責任な人が多いんですよね。
殺処分ゼロの取り組みの目的は、相談された問題を解決する事もありますが、まずはみんなに知ってもらう事が大切だと思っています。そういった想いがあって、十和田青年会議所の事業で行う事になりました。
私は秋田県出身で、小さいときは犬や猫は外飼い、そういう風景は当たりまえの時代でしたが、どこかで疑問を感じていました。20歳の時に仙台で一人暮らしをしていた時、野良猫を人に頼まれて飼った事がありました。犬猫大好きだったしその時は家の中で飼っていたんですが、育てていく中で、反省がありました。
その後、猫の正しい飼い方、殺処分の事、野良猫の事とか、詳しく調べることになります。
そしてきっかけとなる大きな事件が起こります。秋田県にある実家の近所で、猫の「多頭飼育崩壊」が起きたんです。一人暮らしのおじさんが突然死しまして、その家には猫が20匹〜30匹?把握できないくらいいたんです。飼い主がいなくなり餌がなくなったので、村中を猫が助けを求めて歩き回ってました。猫のことはよく知ってるつもりでしたが、結局何もできませんでした。目の前で死んでいく猫の姿を見て、こんな悲惨なことが現実にあるんだと絶望しました。
そして、自分にできることをしよう!強い思いが湧き上がりました。まずは主人が餌をあげていた野良猫を保護することを決めました。これが初めての保護猫活動になります。
このような活動をしていくうちにもっと詳しく勉強したくなりました。八戸市で猫の譲渡会がある事を知りました。参加したいなと思っていると、たまたま「動物愛護支援の会八戸」のボランティアの方が、「永楽食堂」に飲みに来てまして、野良猫の事をお話ししてる声が聞こえたんです。
木村夫妻が経営する串揚げ居酒屋「永楽食堂」
〒034-0017 青森県十和田市東二番町2-45
TEL 0176-25-0072
それが繋がるきっかけとなりました。その後「動物愛護支援の会八戸」に入会し、猫の事に詳しい皆さんとつながる事になりました。
「動物愛護支援の会八戸」へ入ったらそこに、十和田から学生さんが参加していましてつながりを持つようになりました。学生の皆さんは頑張って活動しているんだなととても感銘を受けました。
そこで十和田市民としてみた時に、多頭飼育崩壊や保護猫に関する問題は、「北里しっぽの会」に対応が向いている現状を知りました。地域のことは地域の人が解決するべきだし、十和田市の猫の問題をどうにかできないかとも思うようになりました。
神奈川県出身です。北里大学3年生です。
猫に興味を持ったのは、中学3年生の時でした。
ちょうどLINEなどSNSが発達した頃で、SNSで流れてくる猫に関するショッキングな画像や動画などを見ることがあって、そこで殺処分という事を知り、かわいそうだなぁと思う所からはじまりました。
「こういった猫をなくするためにはどうしたらいいんだろう」と考えている中、北里大学に入学しまして、「北里しっぽの会」の存在を知り入ることになりました。その後、できれば猫の室内飼育を広めたいという想いと、十和田市で野良猫を減らす活動ができればと思うようになりました。
ただ、北里大学の場合は獣医学科ではないと3年生が終わると、十和田市を離れないといけないので、そういった活動をやろうとしても途切れてしまう現状にあります。それであれば、十和田市の次の世代を担う、高校生や学生の皆さんに猫に対する知識や、新しい常識になるものを伝えていければ良いのではと思いました。
今回、青森県立三本木農業恵拓高等学校の皆さんと一緒に猫の現状を伝えることができました。また、Youtubeでもお話しした内容なのですが、これからはこういう事を前提の元で猫を飼って行こうねという知識をお話ししまして、それが十和田市の常識になればなと思います。
猫の室内飼育を進めていくことが、私の中の命題になっています。
今後は研究の一環として、猫を自然科学的にも社会科学的にも見ていきたいと考えています。十和田市で猫の適正飼育をもっと広めていきたいです。
2022年8月30日、青森県立三本木農業恵拓高等学校で授業の枠組みで「君と十和田とネコの事 – 猫の殺処分ゼロのまちへ」が行われましたが、開催した経緯を教えてください。
木村侑香さん
十和田青年会議所の方で、各学校へ案内を送っていたのですが、コロナ禍ということもあり、なかなか返事もなく決まらなかったんです。
そういった中、知人の三本木農業恵拓高校の先生から、「永楽食堂」を利用する予約が入ったんです。その時たまたま、主人が訪問先の学校をどうしようかと会議をしている最中でして。それで、その先生に、やってみませんか?と案内したところ、とんとんと話が決まった経緯があります。
当日は、猫の殺処分に関する事を伝え、北里大学有志の会「ノラネコ部」説明する動画や、映画「犬部」のモデルとなった「太田先生」のメッセージ紹介、そして高校生が発信するメッセージとして殺処分ゼロを目的とした写真やキャッチコピーを考えポスターを作成。アンケートを実施する流れとなります。
ポスターアンケートのチラシ折り込みやホームページの公開で、様々なご意見やコメントをいただいていますが、ご覧いただいて、今後どのような方向へ向かってほしいと思いますか?
木村侑香さん
いただいたコメントを見ると、興味を持ってくれている方がたくさんいるんだなと嬉しくなりました。
今回の目標は殺処分ゼロにする事ですが、それには、猫の適性飼育、避妊去勢手術が必要です。そして命を大切にすること。こういった知識を広める活動を継続して行なってくれるサポーターや仲間を増やして、コミュニティーを広げていけたらいいなと考えています。
木村秀政さん
猫保護に関しては、妻の侑香さんが言った事と同じです。
追加すると、殺処分ゼロにするには、地域のコミュニティーの力も必要になってくると思います。コロナ禍や人口減少などの影響で、関係性が希薄化している時代の中ですので、地域のコミュニティーを大切にしたいと思います。猫を可愛がってほしいし、殺処分がないよう命を大切にしてほしいので、関わる皆さんには、知識をつけてほしいと思います。
木村開人さん
お二人が言ってくださったように、地域全体の課題として捉えてもらわないと着手しづらい問題でもあるし、実際に問題が起きないと解決に動きにくい現状もあります。ですので、当事者意識を持ち、猫を飼うことに対して知識を持ってもらう事、また、今回のように、未来を担う中学生や高校生の皆さんに現状と対策を知ってもらって、親や先輩、同級生などへ情報を共有してもらう事になればと思います。今後は、そういう世代の皆さんへお伝えできる活動を行なっていければと考えています。
木村秀政さん
今回は、猫の育て方の根本を変えようとしています。
殺処分ゼロが、今だけの達成では意味がないので、ずっと続くように根本が変わっていければと思います。
今回お話しを聞かせていただいて、知らなかった事が多く驚きもありました。殺処分ゼロのまちを目指すために、改めて、猫の正しい飼い方について教えてください。
木村侑香さん
高校生と一緒に作ったポスターにギュッと詰まっています。是非ご覧になっていただき、想像してください。
そして地域の皆さんの協力が必要です。
木村開人さん
室内飼育をしてほしいです。もし万が一、飼い猫が外へ逃げてしまった場合でも、対応できるようにマイクロチップを埋め込む事を行なってほしいです。
木村秀政さん
餌やりを行わない。去勢手術による繁殖制限。室内飼育。
猫の飼い方を知ってもらって、根本を変えてもらえればと思います。
お話しを聞いての感想
以上、猫の殺処分ゼロのまちへ。命の大切さを伝え、地域の問題解決に取り組む皆さんのインタビューを行いました。
可愛い猫を飼うには、餌や予防接種、去勢手術など経済的な面、飼い主側が許容できる範囲で飼わなければならない事を知ることができました。少子高齢化・人口減少問題の影響でもある独居老人問題など1人暮らしが原因となって始まる多頭崩壊。地域の情報共有がなければ起こる現実と、行政の支援も必要だと感じました。皆さんはどう思われますか?
こちらのホームページから、高校生の皆さんが考えたポスターのアンケートを行なっています。よろしければアンケートにお答えください。